寡黙で不器用、なのに発する言葉には重みと優しさが詰まっている・・・。先日亡くなった高倉健さんに対する、多くの人のイメージです。私も、そんなイメージを抱いてきました。
そんな高倉健さんの往年の作品を思い起こすと、やはり印象的なのは「居酒屋兆治」です。居酒屋チェーンを経営している立場だからというのもあるかも知れませんが、寡黙な居酒屋経営者である藤野英治(高倉健さんが演じる主人公です)のことが気になって仕方ありません。
寡黙で不器用というイメージはこの作品で付いたのではないかと思うほど、高倉さんが演じる藤野英治は無口です。客にインネンを付けられたり、先輩から挑発されても、とにかく頭を下げるだけ。見ているこっちがイライラさせられるほどです。
しかし、その心の中にはかつての恋人が資産家と結婚したものの、その後夫の没落とともに転落していったことを案じる優しい心が見え隠れします。もちろん、今は別の女性と結婚しているのでそんなことを表に出しません。そんな中で、何もできない自分に対する物足りなさや葛藤などが、生き生きと描かれています。
そして、何と言っても映画のシーンには頻繁に居酒屋が登場します。あまり大きなお店ではなく、藤野が一人で切り盛りできるほどのお店です。磯一で言うと江坂店のイメージが近いのかなと思います。それほど大きなお店ではないのに、そこで繰り広げられる人間模様やドラマの空間は実に広大で、やっぱり居酒屋っていいなぁと思わせてくれました。
磯一グループのお店にも、たくさんのスタッフがいてお客様が来られます。それぞれの人が色々な思いを胸に1つの場所に集まっているのですから、そこには居酒屋「兆治」のようなドラマがきっとあることでしょう。そこに集まる全ての人にとって大切な場所をしっかりと守っていく使命を、しっかりと果たしていきたいと思いました。
(画像出典:http://takart.jp/archives/4267)