最近はアベノミクスの影響もあって、特に大企業の業績が回復傾向にあります。
ただし、これは単に企業の収益が改善しているだけであって、必ずしもそこで働いている人の幸福度が上がっているかというと、なかなかそこまで至っていないという声も聞かれます。
その理由は簡単で、大企業はリストラによって最大の出費である人件費を圧縮して、収益性を良くしているのです。
つまり、企業は救われてもそこでリストラに遭ってしまった人は救われていないということです。
そんなご時世で、まだ苦しんでいる大企業があります。
それは、私たちの地元・大阪の企業でもあるシャープです。
太陽光パネルと液晶モニターという2つの事業に経営資源を集中するという独自のビジネスモデルで一時は世界のトップに躍り出たこともありましたが、新興国の猛追にあって業績が悪化、現在の苦しい状況に追い込まれました。
本社の売却や減資など色々と策を打ったことで倒産を免れていますが、普通に考えればすでに倒産していてもおかしくない財務状態です。
もちろんそんなシャープではリストラの嵐が吹き荒れていて、たくさんの人が会社を去りました。
その中にはこれまでのシャープを支えてきた技術者や営業マンも多数含まれています。
そこに目をつけたのが、仙台に本社を置くアイリス・オーヤマです。
格安の家電や家具などを製造・販売している会社で私たちの生活にも馴染みの深い会社ですね。
このアイリス・オーヤマが本社から遠く離れた大阪に研究拠点を置いていることをご存じでしょうか。
目的は、パナソニックや旧サンヨー、シャープなど大阪に本社のある家電メーカーから流出してきた人材を積極的に活用して自社の強みにするためです。
アイリス・オーヤマがここ最近、家電に積極的に投資をしているのは、こうした人材を確保できていることが背景にあると言われています。
長らく働いていた会社を去ることになって、「あなたの知識や技術を高く買います。うちに来てもらえませんか」と声を掛けてくれたら、あなたならどう思いますか?
こんなに嬉しいことはないですよね。
路頭に迷う心配がないというお金の問題だけでなく、自分のこれまでの頑張りを評価してもらえたのですから、冥利に尽きると思います。
少なくとも、私ならそう思います。
アイリス・オーヤマが大阪に拠点を置いたのも、こうした人たちが転居をしなくても働ける職場を提供するための配慮です。
つまり、人材を確保するために大阪にやって来たわけです。
ここまでやってくれたら、人の心は必ず動きます。
こうした集まった人材が高い意識を持って仕事に取り組んでくれる期待値が高いこと。いかにして社員にやる気になってもらうかは、ほぼ全ての企業が常に頭を悩ませている問題だと思います。
アイリス・オーヤマは人材を採用するだけでこの問題を解決しているのですから、単なる人情話ではなくビジネスとしても非常に合理的だと思います。
事実、アイリス・オーヤマとしてはこうした人材にとても期待しており、シャープから流出した人材も積極的に採用していく予定だと語っています。
このように人を大切にする会社が伸びるのは、個人的にもとても喜ばしいことだと思います。
人は斬るものではなく、育てるものです。
磯一グループの人づくり、人に成長してもらう会社づくりにも大いに通じるものがあると感じました。